サンディとビートの時々友達(限定手作り絵本)


2004年、サンディとビートをモチーフにしたストーリーを初お披露目。
カバーデザインに一つずつ違うコラージュをほどこし、完全オリジナルの手作り絵本として100部限定で製本しました。

いま手元に残っているのは、見本として使っていた1冊だけ。

ストーリーは「サンディとビートの出会い」について、フィクションを交えて描いています。

これをきっかけに『一緒にいるとめんどくさいことばかりだけど、一人じゃつまらない・・・二人でいると急に毎日が輝き出す!』みたいなことをテーマに作品作りをしています。


Sometimes Friend(時々友達)

こんにちは。

ボクの名前はサンディです。

そしてこれは犬のビートです。

うさぎのボクと犬のビートは二人の同居人と一緒に暮らしています。

でもボクはビートと仲良しではありません。

だって、ビートはボクのごはんを食べてしまうし、急に大きな声を出して、ボクの耳をガンガン痛くさせるからです。

そんなビートが初めてうちにやってきた日のことをボクはよくおぼえています。

雪の積もった日曜日、うちの同居人たちが朝から話をしています。

「だいじょうぶかしら?」

「サンディと仲良くなるといいね」 ・・・・?

なんのこと?

二人はなんだか嬉しそうに出かけていきました。

夕方になって、二人はようやく帰ってきたようですがなかなか部屋に入ろうとしません。

なんだか様子がヘンです。

しばらくしてドアが開き、二人がボクに話しかけました。

「ただいま、サンディ。お友達を連れてきたよ!」

「これから仲良くしてね」

白くて耳の短い生き物がボクの前に現れました。

「!!!」

そいつはうるさく吠えて、長いしっぽをブンブンふってこっちに向かって走ってきます。

ボクはびっくりして部屋の中を逃げ回りました。

するとそいつも一緒になって走り回ります。

「ひゃ〜!やめて〜!!」

ぐるぐる何周も走り回ったあと、そいつは捕まえられいつの間に用意されたのか、ケージの中に入れられました。

それがビートとの出会いでした。

それからというもの、ボクの生活は豹変しました。

朝、ビートは早く起きてきて、ボクの大好きなレタスやニンジンを横取りするし

昼は寝ころんで音楽を聴いているボクのまわりでドタドタ走り回るし

夜はしょっちゅう大きな声で寝言を言うので そのたびにボクは飛び起きてしまうのです。

なにより変わったことは、雪の日にうちにやってきたときには ボクと同じ大きさだったのに、 夏になった今ではボクの何倍もの大きさになっているのです!

どんどん大きくなるビートとの暮らしにも、慣れてきたある日のこと。

いつものようにビートはお日さまのあたる場所でいびきをかいて昼寝しているので ボクはお気に入りの秘密の場所に遊びに出かけました。

それは壁に沿って置かれたステレオの裏の細長い隙間のことです。

音楽を聴くのが大好きな同居人が大切にしているステレオは 裏にコードが何本もつながっていて、それを噛むのがボクの一番の楽しみなのです。

コードをそ〜っと噛むと何ともいえないいい気持ち!

でも強く噛みすぎるとビリッと電気が走るのと、ステレオから音が鳴らなくなって 同居人にとても叱られるので要注意です。

今日も壁とスピーカーの隙間をすり抜けて、赤いコードや青いコード、黄色いコードがからまる裏道にたどり着きました。

「さぁ、今日はどのコードを噛もうかな!」

迷っていると、 「あれ?」奥の方でキラッと光る物があります。

近づいてみると、それは腕時計でした。

そういえば同居人が腕にこれをしているのを見たことがあります。

たぶん、落としたのでしょう。

「仕方ない、届けてあげよう。」

ボクはその腕時計を頭からかぶってみました。

ちょうど、おなかのあたりで止まって、チャンピオンベルトのようになりました。

時計をはめたまま、ボクは来た道を戻り始めました。

それはスピーカーと壁の隙間をすり抜けようとしたときでした。

「ゴリッ」 という音がしておなかに巻いた時計が隙間にひっかかったのです。

なんとかして抜け出さなくちゃと、一生懸命ふんばってみますがもがいている間にとうとう前にも後ろにも進めなくなってしまいました。

「どうしよう」 ボクは途方に暮れてしまいました。

巻いた時計は冷たく、だんだんとおなかも痛くなってきました。

「そうだ!」

「ビート!」

「ビート助けて!」

ビートはのっそりと起きあがり、あたりを見回しています。

ボクは足をバタバタさせて、もう一度ビートを呼びました。ビートはようやくボクのいるところがわかったらしくスピーカーの前までやってきました。

ビートはどうしてボクがこんなところにはさまっているのかさっぱりわからないようで、首をかしげていましたがやがて遊んでいると勘違いして、ボクの頭や体を大きな舌でぺろぺろなめ始めました。

「やめろ〜!くすぐったい!!」

ボクがもがくと、ビートは喜んでどんどん顔を近づけてきます。

壁とスピーカーの隙間に鼻をぐりぐり差し込んで、ボクはべちゃべちゃになってしまったその時、

「ゴトン」と音がしてスピーカーが動きボクはようやく抜け出すことができました。

「ふ〜〜っ」 ボクはソファの前のテーブルに登って腕時計をおなかからはずすと、すっかり疲れてソファで眠ってしまいました。

どのくらい時間がたったでしょうか 同居人の声が聞こえてきました。

「あれ?この腕時計。」

「あー!なくしたと思ってたけど、どこから出てきたんだろう!」

「もしかしてこのコ達が見つけてくれたのかもね!」

「ビートとサンディくっついてよく眠ってるわ」

「仲良くなってよかったね」

・・・ボクは眠りながら・・・

「仲良しなんかじゃない」と言いたかったけど

ビートのおなかはとてもあったかくて、気持ちよかったので

「ま、いいか」と眠り続けました。


おしまい。

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